目次
概略
近年ナミビアにおいても、貧困からの脱却、雇用創出・失業率改善、新たな産業の育成などの観点から、スタートアップの育成に関心が高まっています。かつてナミビアを植民地としていたドイツだけでなく、フィンランドやフランス等もStartupの支援に乗り出しています。
ナミビア滞在時に感じた ” Startup “の定義ですが、短期間で急成長を目指す会社をStartupと呼ぶだけでなく、イノベーションを起こそうとしている人、新たにビジネスを立ち上げようとしている人、勢いのあるベンチャー企業・中小企業などを総称して、”Startup “と呼んでいるように感じました。
ナミビアのStartupをインターネットで検索すると、観光、小売(リアル店舗の支援サービス)、教育、人材紹介の分野に取り組む企業が挙げられています。
ナミビアの市場規模は、人口が約245万人と決して大きくはありませんが、ドイツ系の住民の人達もおり、ヨーロッパのStartup支援機関とのアクセスができつつあります。これらStartup支援機関のサポートを受けつつ、ナミビアだけでなく南部アフリカ全体に、サービスを展開できるStartupがナミビアから生まれれば良いなと、個人的には感じております。
また日本のリソース(事業会社やStartup支援機関など)と、ナミビアの起業家が繋がり、より良いサービスが生まれることも期待したいと考えております。 * なお本記事にて記されている見解はあくまで個人的見解です。本記事が、日本・ナミビアの両国の発展の一助となりますと幸いです。(2021年7月 茂木 智仁)
代表的なイベント: Namibia Startup Festival
2017年に開始されたイベントで、年1回のペースで開催されています。イベントは、スタートアップの育成環境をナミビアで構築するため、関係者(起業家、企業、政府など)の繋がりを強化することを目的に開催されています。
筆者は2018年のイベントに参加しましたが、開放的な環境で、エネルギッシュなプレゼン、ピッチ、セミナーが繰り広げられていました。

上の写真は、イベントが始まる前の会場の様子ですが、キャンプ場やお祭りにいるかのような雰囲気で、とても熱気に溢れていました。

上の写真のようなスペースで、干し草の上に座り、IncubatorやAcceleratorから話を聞くのは、とても新鮮な体験でした。
このイベントを主催しているのは、FLI ( Financial Literacy Initiative )という組織です。このFLIという団体は、ナミビア財務省の敷地内にあり、ドイツの支援も受けています。Namibia Startup Festival に参加した際、見た目でアジア人と思われるのは筆者だけで、珍しさからか様々な人達に声をかけられました。
イベント主催者のFLI の人からも声をかけて頂き、後日 FLI のオフィスを訪れ、意見交換を行いました。

上の写真は、FLIのオフィスの入り口の写真です。時期は9月ですが、桜のような綺麗な木々が立っていました。
支援機関:
SAIS ( Southern Africa Innovation Support) : https://www.saisprogramme.org/
フィンランド外務省の支援のもと、スタートアップ向けのプログラムを提供している。プログラムに応募できるのは、ナミビアのスタートアップだけでなく、ボツワナ・南アフリカ共和国・タンザニア・ザンビアのスタートアップも応募することができる。 Fundも有している。
このSAISのプログラム担当者とも話をしましたが、とても社交的な方で、精力的に活動を行なっていました。
ナミビアでイノベーションを担当する省(Ministry of Higher Education, Training and Innovation)とパートナーシップを結んでおり、同様にボツワナ・南アフリカ共和国・タンザニア・ザンビアにおいてもイノベーションを担当する省とパートナーシップを結んでいる。
DOLOLO : https://www.dololo.io/
Co-working spaceの運営、Entrepreneurship教育、各種イベントを実施している。Co-working spaceは、” DoBox “という名称で、FNCC( Franco-Namibian Cultural Centre )の敷地内にある。[なお FNCCは、フランス語教室や各種イベントが行われている施設で、ナミビア側が土地を提供し、フランス政府の支援のもと建設された施設である。]DOLOLOの実施しているプロジェクトを、以下に記載する。
” FemTech ” プロジェクト: フランス大使館(在ナミビア)の支援で行われ、ナミビアの女性起業家の支援のため、(1)メンタリング(2)国際イベントへの招待(3)フランスのInnovation communityとの接続 等が2020年10月から2021年12月にかけて行われる。 Pitch competitionも既に行われている。
” Dololearn ” プロジェクト: 21世紀型の新しい教育手法( Active Learningや E-Learning等)を、ナミビアや南部アフリカに導入する上で、どのように現地事業に合わせ最適化するかを探る Pilotプロジェクトである。フィンランド教育機関が協力し、フィンランドで成功している手法も試された。
このDOLOLOのCEOおよびCo-Founderの方々とも意見交換を行いました。
Basecamp 及び Digital Transformation Center : https://startupnam.org/projects/
ドイツ国際協力公社[ Deutsche Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit(略称:GIZ) ]は、ナミビアのStartup Ecosystemの発展のために ” Startup Namibia ” というプロジェクトを手掛けている。このプロジェクトにて、” Basecamp ” 及び ” Digital Transformation Center ” の運営を行なっている。
” Basecamp ” は、co-working space, marker space, community area, small shop があり、Startupのニーズに幅広く対応できる施設となっている。
” Digital Transformation Center “は、デジタル技術向上のため、IT & Tech Startupだけでなく、女性・若者・ハンディキャップを持つ人達への支援も行う。” Basecamp ” 及び ” Digital Transformation Center ” での Acceleration プログラムで、パフォーマンスの良いStartupには、” Slingshot Fund “が用意されており、資金へのアクセスもある。
なおこの” Startup Namibia “プロジェクトは、2019年から2022年まで実施予定とのこと。(出典:https://www.giz.de/en/worldwide/77863.html )
CoWork:
鉄道車両基地に隣接する社員食堂を改装してできた Co-working spaceです。下の写真の赤丸の場所にあります。

筆者が親しくしていた現地の起業家に「今度、うちのオフィスで話をしよう。」と言われ、この場所を訪問することとなりました。彼に案内され、人のいない車両基地に着いた際は、「私はどこに連れていかれてしまうのか。」と少し不安になりましたが、建物に入ると、工房のようなお洒落で開放的な執務スペースが広がっていました。
写真を撮るのを忘れてしまいましたが、Google Street Viewで建物内の様子も確認できます。綺麗な会議室もあり、その会議室で現地起業家の相談や話に耳を傾け、有意義な時間を過ごすことができました。